理事長挨拶

東部金属熱処理工業組合

理事長 大屋 和雄

東部金属熱処理工業組合は、昭和47年(1972年)9月1日に設立してから、40年以上活動してまいりました。ひとえに歴代理事長をはじめ先輩理事の皆様のご尽力と、平素より格別のご高配を頂戴しております関係官庁並びに関係機関のご指導とご協力によるものであり、さらに組合員や賛助会員、各企業の皆様の本組合に対するご理解とご支援の賜物と、厚く御礼申し上げます。  

さて、平成20年のリーマン・ショックによる世界的金融危機が発生し、世界的な経済の冷え込みから消費が落ち込み、急速な円高ドル安が進みました。日本経済は、米国市場への自動車などの輸出産業から大きなダメージが広がり、結果的に大きな景気後退となりました。金属熱処理業界も大打撃を受け、それまで右肩上がりの熱処理加工高が、前年度の約40%減となりました。その後、組合員皆様方の懸命の経営努力により、少しずつ回復基調に戻ってきた矢先に3.11の東日本大震災と福島第一原発爆発事故(平成23年)が起こりました。4年経った今でも被災地では、復興というには程遠い状況で、未だに避難を強いられている方が大勢いらっしゃいます。一日も早い復興を祈るばかりです。東部組合の組合員におかれましても、原発事故直後の計画停電で生産調整を余儀なくされ大変なご苦労がございました。  

平成24年12月に民主党政権から自民党政権に移行し、安倍内閣が誕生いたしました。経済対策を最優先課題に掲げ、デフレからの脱却という強い目標に対し、アベノミクスという経済政策を打ち出しました。円高から円安に転換し、株価も上昇し、輸出中心の大企業は恩恵を受けておりますが、中小企業の業界には、まだまだ実感は伴っておりません。エネルギー多消費産業であります当組合員企業にとっては、急激な円安による輸入材料の高騰や電気・ガス料金の大幅値上げによるエネルギーコストの増大など重くのしかかっている状況であります。

しかし、組合員の皆様方におかれましては、これまでも様々な荒波を乗り越えて来て現在に至った感がございます。そしてこれからも、皆様方が一体となって、こうした難局を突破していくものと確信しております。  

ここで、業界の発展のために組合が取組んできました事業活動についてご案内いたします。

1) 人材育成

組合としては、組合員に喜ばれるような事業活動を展開すべく、『ものづくりは人づくりから』を合言葉に人材育成事業を実施してきました。近年、ほとんどの大学では材料学科が消滅したため、熱処理技術・技能の伝承に困難が生じるという危機感から、層別の人材教育カリキュラムを組んで行っております。

(1) 主なものを列記してみますと、以下の様になります。

  • 初級教育として、「人材養成講習会」、「初級熱処理塾」 熱処理技術に興味を持つよう、鋼の誕生と熱処理技術の概要を教育します。「人材養成講習会」は、厚生労働省のご支援により、平成20年から実施しております。
  • 中級教育として、「中級熱処理塾」   不具合事例を参考に講習会を行っております。(隔年開催)
  • 金属熱処理技能検定受験対策講習会   国家資格の技能検定受験対策に適したテキストを発行し、講習会を開催しています。毎年、多数の合格者を生み出すお手伝いをしています。
  • 高度な熱処理技術を持った次期経営者を育てるための「製造中核人材育成講座」   経済産業省関東経済産業局のご支援で平成20年に作り上げました産学連携による講座です。これは、東京工業大学で座学および実習、都立産業技術研究センターにて実習、組合企業でインターンシップと学び、2年間かけてスーパーマイスターを20名ずつ輩出していこうというものです。これまで3期60名の修了者を数え、現在4期の20名が受講しています。運営は、現在、東京工業大学に移管されており、講義終了後の合否判定を経て、合格すると修了証として「金属熱処理スーパーマイスター」の称号を授与されます。   
  • その他では、ISO認証取得支援、ISO内部監査員教育など、数々の関連セミナー開催で多数の組合員企業にご利用いただております。
    講師は、組合員企業の技術者や熱処理業界で長年勤めて退職し、技術事務所を立ち上げている方などにお願いしております   

(2)各種マニュアルの作成    

  • 組合内の技術委員会が主体となり、「熱処理のための省エネマニュアル」と「エネルギー管理標準マニュアル」の冊子を作成し、組合員に配布し、省エネ活動を推進してきました。    
    マーケティング委員会としては、「金属熱処理需要に関するインタビュー調査」ならびに「金属熱処理におけるアジア進出の現況と今後の展望」という調査報告の冊子を作成し、組合員に経営の参考資料として配布しました。

2)魅力ある組合づくり    

組合員企業が関心のあるエネルギー問題(省エネ対策、コスト増大など)、海外進出、新規分野への参入(航空機、ロボット、医療など)、人材の問題(教育・育成、人材不足など)などについて情報の提供や共有をし、組合員企業の発展に繋がるように取組んで行きたいと考えております。    

また、金属熱処理加工の前後の工程の異業種企業(鋳造、鍛造、金型などの素形材産業)と交流し、情報交換を行うことでネットワークを構築することも必要だと考えております。

3)金属熱処理業の地位向上、認知度向上   

まず金属熱処理について一般の方に知ってもらうことが必要です。代表的な自動車、船舶、航空機などの輸送機械や建設機械、産業機械、金属製品の他、家電やスマホ・携帯電話、工具など身の回りのものにいかに金属熱処理が関わっているのか、日本製品の高い品質と性能の信頼性を支える基盤技術として、広く深く私たちの生活に浸透しているかを知っていただきたいと思います。   

また今後さらに少子高齢化が進むことを考えると将来を担う中・高校生にもっと金属熱処理に興味を持ってもらうように組合として努力して行きたいと思います。まずは、技能検定試験の3級を受験することが可能な工業高校の生徒さんにPRしていきたいと思います。

4)国際化(情報収集他)   

国際化を考えるには、日本の金属熱処理業界が世界のどの位置にいるのかを知る必要があります。何に強みがあり、何が弱いのか。積極的に欧米の最新技術を調査する必要があります。また経済産業省主催の素形材海外ミッションに参加し、実際に現場を見て、感じて来ることが重要であります。その他、展示会や講演会、セミナーにも積極的に参加し、情報収集することが大切であります。

最後に沢山の方々のご努力とご協力により40数年間の歴史が作り上げられていることを肝に銘じ、皆様の期待を裏切らないよう、その責任を果たしてまいりたいと存じます。創立50周年に向けて、関係官庁、関係団体、組合員並びに賛助会員の方々による一層のご指導、ご鞭撻を心からお願い申し上げます。