1.鉄鋼材料とは
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図1.1に示すように、鉄鋼材料の主成分は鉄(Fe)であり、そのほかに必ず含まれる元素がある。これらは鉄鉱石や製鋼過程で混入するもので、鉄鋼中の5元素と呼ばれており、炭素(カーボン:C)、けい素(シリコン:Si)、マンガン(Mn)、りん(P)および硫黄(S)がこれに該当する。
5元素の中でもCはとくに重要な元素であり、鉄鋼材料の硬さやじん性に及ぼす影響が大きい。そのため、炭素の含有量が鉄鋼材料を分類する場合の考え方の基本になる。すなわち、炭素が0.006%以下のものは純鉄(α-Fe)、0.006%を超えるものを鋼(はがね)と呼ぶのが一般的である。このことは、鉄鋼材料といってもそのほとんどが鋼であることを示しており、炭素量としては最大でも2%程度である。それよりも炭素量が多い場合は鋳鉄として用いられている。
鋼におけるこれら5元素の含有量は、特殊な場合を除いてほぼ決まっており、その範囲は、Cは0.04~1.5%、Siは0.1~0.4%、Mnは0.4~1.0%、Pは0.04%以下、Sは0.04%以下である。
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SiやMnは、鋼中の有害物質の除去を目的として製鋼時に添加されるものであり、有益元素として前述の範囲以上に添加されることもある。
PおよびSは鉄鋼材料に対しては有害元素であるため、含有量はできるだけ少ないほうが望ましい。Pは鉄鋼材料の遅れ破壊を誘発したり、低温で使用する際にもろくする性質(低温ぜい性)がある。一方Sは鉄鋼材料を高温で使用する際に、もろくする性質(熱間ぜい性)がある。ただし、Sは鉄鋼材料の被削性(切削加工の容易さ)を向上させる働きがあるため、0.3%位まで添加した快削鋼が例外としてある。 |
図1.1 鋼の基本構成元素 |
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2.機械構造用鋼の種類
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機械構造用鋼とは、一般機械、産業用機械、輸送用機械などの構造用材料として用いられるもので、キルド鋼から製造されており、使用する際には機械加工や熱処理が施される。構造用鋼としては、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼および焼入性を保証した構造用鋼がJIS規格でも規定されており、炭素含有量や添加されている合金元素によって分類されている。 |
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C |
Mn |
Cr |
Mo |
SCM435 |
0.33
〜0.38 |
0.60
〜0.90 |
0.90
〜1.20 |
0.15
〜0.30 |
SCM435H |
0.32
〜0.39 |
0.55
〜0.95 |
0.85
〜1.25 |
0.15
〜0.35 |
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(1)
機械構造用鋼のJIS規格 |
機械構造用鋼としては、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼および焼入性を保証した構造用鋼がJISで規定されている。鋼種別のJIS記号は図1.2に示すように、炭素含有量および添加されている合金元素の種類や量によって英字および数字の組み合わせで構成されている。
最近では、国際規格(ISO)との整合性を図るために、鉄鋼材料全般にわたってJIS規格の再確認または改正が活発に行われている。機械構造用炭素鋼は2000年に再確認されており、H鋼や機械構造用合金鋼は2003年に改正されている。
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機械構造用鋼に関する大きな改正点は、表1.1に示すように、機械構造用合金鋼の鋼種別に規定されていたJIS
G 4102〜JIS G 4106(1979)が統合廃止されてJIS G 4053(2003)に置き換えられていることである。しかも、SCM425が追加されて38種類から39種類になり、一部の鋼種については、ISO規格と整合するようにCr量とMo量の化学成分規制値も一部変更になっている。
H鋼については、SCM524Hが追加されて23種類から24種類になり、しかも一部の鋼種についてはMn量の化学成分規制値が一部変更になっている。 |
図1.2 機械構造用鋼におけるJIS記号の構成 |
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表1.1 機械構造用鋼におけるJIS規格の確認または改正状況
鋼種 |
JIS(1979) |
確認または改正 |
備 考 |
機械構造用炭素鋼 |
S--C |
G 4051 |
G 4051
(2000確認) |
とくに変更なし |
焼入性を保障した構造用鋼材(H鋼) |
G 4052 |
G 4052
(2003改正) |
一部Mn量変更 |
機械構造用合金鋼 |
SNC |
G 4102 |
G 4053
(2003改正) |
一部についてCr量,
Mo量変更 |
SNCM |
G 4103 |
SCr |
G 4104 |
SCM |
G 4105 |
SMn,SMnC |
G 4106 |
アルミニウムクロムモリブデン鋼 |
SACM |
G 4202 |
G 4202
(1994確認) |
とくに変更なし |
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