企業ロゴ 企業名前ロゴ [HOME]

熱処理技術講座 >> 「熱処理のやさしい話」

第4章 鉄鋼中の元素の役割

(1)Cの役割(鉄鋼の主役)

純鉄にCを添加した場合、その量によって鉄、鋼、鋳鉄の3つに分類されることは既に述べました。なぜ最高でも2.1%と少ない量でもCのみの添加で区別するのか、これは硬くなったり軟らかくなったりする性質が一番強いからです。Cそのものは硬くはありませんが、鋼中に入るとFe3Cの炭化物となり、硬くかつ引張り強さも大きくなります。つまり、1%のCはFe3Cに換算すると硬さを15%も増加させ、強さも980Mpa以上向上させる働きがあのです。

引張り強さ(Mpa)=100×C%+20

硬さ(ショアー)=20×C%+20(焼なまし)

焼入硬さ(HRC)=30+50×C%

のような関係式があります。また、物理的性質もC含有量の相違によって異なります。

溶融温度:Fe中のC%が増えるほど→低くなる

熱膨張係数: 〃 →小さくなる比 重: 〃 →小さくなる

熱伝導度: 〃 →小さくなる

電気抵抗: 〃 →大きくなる

JISでは鋼をC含有量で普通炭素鋼と炭素工具鋼に区別しています。一般には次のように区別しています。

C0.2%以下→極軟鋼

C0.2~0.3%→軟鋼

C0.3~0.5%→半硬鋼

C0.5~0.8%→硬鋼

C0.8~1.5%→最硬鋼

2)特殊元素の役割(調味料の効果)

実用鋼に含まれる元素はCのみではなくSi、Mn、P、Sがあり、Cを含めたこれらの元素を鋼の5元素といい、鋼の基本をなす元素です。添加量はC0.04~1.5%、Si0.1~0.4%、Mn0.5~0.8%、P0.04%以下、S0.04%以下の鋼が正常と云われています。さらにこの中により高い硬さ、より高い強さ又は耐摩耗性、耐疲労性、耐食性などの向上のためにCr、Mo、W(タングステン)、V(バナジウム)、Ni、Co(コバルト)、B、Ti(チタン)などの特殊元素を加えます。以下鋼中に添加されている各種元素の役割について簡単に記述しておきましょう、

C:硬さ、強さを増加させる最も重要な元素です。

Si:硬さ、強さを増す元素、Si1%に付き引張り強さ約98Mpa上昇します。

Mn:良く焼きが入るようなり、強じん性を与える働きをします。

P:有害な元素であり、寒いときに鋼をもろくする性質があります。つまり、冷間ぜい性を起こしやすく、偏析を生じやすい元素の1つです。

S:Pと同様有害元素です。Pとは逆に赤めたときにもろくする性質があります。これを熱間ぜい性と呼んでいます。

Cr:耐摩耗性、耐食性を増加させる元素です。また、浸炭を促進し、焼入れし易くする働きもあります。

Mo:焼きの入る深さ(焼入性)を増加させる最も優れた元素。高温における結晶粒の粗大化を防ぎ、高温引張り強さも上昇させます。Cr、Mn、Wなどと一緒に添加されるさらに効果的です。

Ni:低温における耐ショック性を増加させ、また、耐食性を向上させる働きもあります。

V:結晶粒を細かくし強じん性を与え、さらに硬い炭化物を形成するため耐摩耗性の向上にも役立ちます。

W:高温における軟化抵抗が大きく、Vと同様硬い炭化物を形成します。また、Moと同じ作用しMo1%とW2%が大体同じ効果があります。

Co:鋼中に溶け込み熱に強い性質、つまり、赤熱軟化抵抗を増大させる元素です。

B:0.003%以下の添加だけで良く焼きが入る性質を与える元素です。

Ti:焼きを入りにくくする元素、ただし、ステンレス鋼に添加されると耐食性が増加します。

以上簡単に鋼中の添加元素の役割について簡単に述べましたが、これらの元素はフェライト中へ固溶するもの、また、炭化物を形成し有効に作用するものとがあります。Ni、Co、B、Mo、Crはフェライト中に固溶して強じん性、耐熱性、焼入性、耐食性などの向上に付与し、Cr、Mo、V,Ti、Wなどは硬い炭化物を形成し耐摩耗性の向上に役立ちます。

<< 第3章 鉄鋼材料とは 第5章 熱処理を知る前に >>
目次へ戻る